緩やかな
カーブのある
水路に沿って
海岸線を
どこまでも
歩いて行きたかった
ゆっくり
ゆったりと
流れる
風の音(ね)に
耳を澄ますと
遠くで誰かが
呼ぶ声が聞こえた
反芻する波の音に
かき消されないように
あなたの言葉が
消えてなくならないように
淡い残像(おもかげ)が
渚に長い
影を曳いた
夕暮れ時
暑かった夏の日
火照る肌
胸騒ぎがした
たぶんあのとき
確実に
あなたに
恋をしていた
時間の止まった夏
(2013)
〜〜〜〜〜〜
「初恋」かどうかさえ、あやふやな記憶。
東京オリンピックは終わっていたので、1966年頃だと思う。
当時大学生だった叔父の運転する車(日野コンテッサ)に乗せてもらって
湯河原の家と湘南方面によくドライブした。
ラジオか、あのガシャっと入れる
「8トラック」が主流だった。
ああそういえばエアコンも付いていなかった。
車のクーラーが一般化するのは、もっと後だ。
茅ヶ崎のホテルパシフィック
当時の憧れの場所
そこにいるだけで
夢現つ(ゆめうつつ)に
なってしまう場所だった
西日の眩しい車の中
ぼーっと外を眺めていたら
突然、同級生の女の子のことが
思いだされて、苦しくなった。
何とも自分で表現できない
「やるせない気分」
「切ない想い」
になったことを
憶えている。
あれが初恋だったのか?
『夕日、湘南、ホテルパシフィック、スパイダーズ』で
記憶に刻まれている。
1966年
「夕日が泣いている」スパイダーズ