奥田誠二君のこと
お茶の水女子大付属幼稚園から中学入学まで一緒だった。
この人は、ジブリの映画のプロデューサーとして有名な人なので、あえてここで書く事もないだろう。輝かしい彼の経歴(Wikipedia)をみても、彼がいかに(現在進行形で)優れたプロデューサーかがわかる。
最近では、「ココリコ坂」はあの時代の空気感が大好きだったし、先日観た「風立ちぬ」では涙した。偶然だか、以前ご縁があって医学監修の手伝いをした作品(「デスノート」など)も彼がプロデュースしていた事を知り、あらためてご縁を感じている。
彼は人を押しのけて何かしたり、乱暴をしたりする事のない、どちらかといえばクラスの中で目立たない、いつもニコニコしている穏やかな子だった。
その彼が大学卒業後、日テレに就職したことは知っていたが、まさか辣腕映画プロデューサーとして有名になっているとは全然知らなかった。
311後に久しぶりに再会して、お互い今後何かコミットできないか考えてた矢先に、僕の病気が発覚して、入院してしまったのが残念なのだが。
さて本題。
彼の事で今でも鮮明に憶えていることがある。
小学校4−5年生だったと思う。夏休みの宿題だったかもしれない。何でも自由に数値の変化や変動を表やグラフで表示してみましょうという課題が出た。定番の宿題だろう。多くの級友たちが、自分の観察していた植物の大きさがどうだったとか、速度と距離とか計測の出来るものを「研究」した。
ところが彼はちがった。
今でも憶えている。
ユニークだった。
クラスや家庭で
「笑いを取ったら一つ」
笑顔のおサルさんのスタンプをつける、というルールで
彼なりのリアルタイムの人気投票をやったのだ。
話がウケて、
お猿さんスタンプが多く押されると
山が高くなり
ウケなければ、
平坦な山になる
ヒットチャートや
視聴率や
人気投票 のこども版のようなものだ
つまり、ある期間、周りの人を
どれだけハッピーに出来たのか?ということを
彼なりに定義し
定量化したのだ
もちろん自作自演ではあるし
「遊び」なのだけれど、
僕はこの発想には驚いた
そんなふうに「ウケる事」を捉える人がいるんだ!という驚き。
さらに、あの大人しい奥田君がそんなことを(笑)考えていた!という驚き。
その時の事は、よほど印象的ったんだろう
彼の書いた「おサルさんスタンプ」の漫画のことを
鮮明に憶えているし、
教師が「これは面白いグラフだ」と
絶賛したのをはっきりと憶えている
何より、皆から褒められて
嬉しそうにしていた彼の顔を
憶えている
こういう記憶はずっと忘れないものだ
その後、花開いた彼の才能の片鱗は
「そこ」にあったのではないか?
(だとすれば僕らは人生の大事な場面を目撃したことになる)
たぶん人間の「本質」というのは
そんなに変るものではないんだろう。
10歳になる頃までには
そのかなりの部分が
決まるのかもしれない
そうだ、今度彼に会う機会があれば
是非聞いてみよう。