医学部への進学が決まり、具体的に学生生活をイメージできるようになって、困ったことになった。きわめて深刻な個人的問題だけれど、絶対に克服しなくてはならない問題に直面することになったのだ。
否、嫌いではなく
本当に「怖い」のだ
実物はもちろん、写真や絵、置物...すべて苦手。
アニメのキャラや漫画もダメ
小さい雨蛙くらいのサイズから、
大きなウシガエルまですべてダメ。
生理的にだめ
あのヌメヌメした
存在自体がダメ
そこにいる、というだけで
足がすくんでしまう
ヤツらの方からは、とくに危害を加えられることはないし、
子供の頃、何かトラウマになるようなことがあったとも思えないが。
嫌悪する対象と云うより
恐怖そのもの
しかし
ウシカエルの解剖は
生物学実習の必須項目
逃れることはできない
実は医学部にめでたく合格したものの、「蛙が触れなくて退学した可哀想なヤツ」という汚名を着せられる恐怖を、かなり切実に感じていた。本人からしてみれば最悪のストレスだ。実習に欠席は許されない(欠席は再実習となり、その場合さらに最悪だ)。
さて、医学部初年度の生物学実習。まずシラバスが来た時にそのページをチェックした。やっぱり、ある。それも「ひとり一匹、特大のウシガエル」とのこと。
最悪だ。逃れようのない事態。
で、どうなったか?
もう瀬戸際。
やるしかないでしょ
水槽からあげられたカエルを持った学生は、それぞれ「わーわわーきゃーきゃー」言いながらそれぞれの実習机に向かった。暴れて逃げ回るカエルを必死に固定した。(はずだ、実は頭が真っ白であまり記憶がない)。実習室内は阿鼻叫喚。
あ、そうか、蛙が苦手なのは、僕だけじゃないのだ。。。
そう考えたら、すーっと楽になった
正気に戻ったときには、四肢を固定されエーテル麻酔したウシガエルは大人しくなっていた(当たり前だ<笑)。そこからは、冷静になってテキストの細かい実習手順に沿ってて数時間の解剖をした。やれやれもう動かないはずだと油断していた時に、突然カエルが動いて肝を冷やしたくらいで(本当にチビりそうになった)、実習開始前の異様な緊張感を考えると、時間とともに冷静になって「何とかなるもんだ」と思った。否、人間追いつめられれば、何とかするもんだ。今でも時々その緊張感を思い出す。
その後も医学部の大変な実習は続く。すごく正直にカミングアウトすると、卒業まで一度も再試験なく通れたのは「あの蛙実習」を乗り越えたことが自分的には一番大きかったのだ。それと、実習の最後に献体した動物達に手を合わせる医学部のカルチャーも初体験だった。その後の医学部教育前半のハイライトの解剖学実習も含め、同期のかおるさんさんは6年間すべて隣で実習していたので、すべて見てるはず(笑)。