僕らの子供の頃のラーメンは、現在の「醤油ラーメン」。それしかないワケで「塩」とか「味噌」の選択肢が出現し始めたのは昭和40年代の後半に入ってからだろう。いわゆる第一期札幌ラーメンブームだ。サラリーマンだったオヤジが札幌に出張して、お土産に買って帰って来たときの「熊五郎ラーメン」は、ある意味衝撃的だった。中学生の頃。ラーメンに味噌味!というのは、当時の子供たちにとっては驚き以外のなにものでもなかったわけだ。飯田橋に札幌ラーメンの店ができて(たしかチェーン店だった)、東京でも札幌ラーメンが食べられるようになった。その状況は今の時代から考察すると、東京でトルコの名店のカバブが食べられる位のインパクト(爆)だったのだ(誇張じゃなくて)。だって、ラーメンにモヤシ入っているなんて、東京育ちの子供には想像だにしなかったし。
基本形の東京ラーメンは、僕は今でも、神田の「ピカ一」とか水道町の「和光」のラーメンだと信じている。現在でも「東京風醤油ラーメン」をうたっている店はあるけど、違うんだな。似て異なるもの。当時のシンプルでチープなラーメンとは違うんだな。究められてないのが残念。佐野さん(@横浜ラーメン博物館)の作るラーメンだって近いけど違うもんね。春木屋さんは今一番近い・・・けど、ちょっと違う。
シコシコのカンスイ一杯の黄色くて固めの細めん。出汁はトリガラとシンプルな魚介系(たぶん昆布と煮干くらいだろう)だけ。四の五の言わず、基本を抑える仕事。ただそれだけ、なんだけど。そのシンプルにして深い仕事をしてくれる店がないってことか、今は。
ピカイチは、立ち食いなので腹ペコでオーダーしてから、オヤジの華麗な仕事ぶりをわくわくして観ながら待っていると・・・、耳かきくらいの小さなスプーンで味の素を丼に1-2杯(爆)、醤油だしと少量のラード、ミジン切りした葱を散らして、そこに澄んだスープを入て数秒。固めに湯掻いた細めんを独特のアクション(独特のタメがある)で湯切りして投入。そこに濃い味のしこしこのメンマと小さなチャーシューとナルトを入れて・・・完成。
立ち食いで無心にかっ込んだあの頃の東京ラーメンは、僕のラーメン原点だと思う。
このシンプルで深遠な味の「東京ラーメン」
今のラーメンは懲りすぎなんだよね。うまいんだけど感動がない。おやじの戯言かもしれないけどね。
だれか、あのシンプルで不健康な東京ラーメンを復活させてくれないかな(笑)。