助けあいジャパン

February 10, 2011

「根拠のない楽観」

朝イチで、本庁指令センター内の救急相談センター。担当した4時間ひっきりなしに相談電話がかかってくる。オペレーター(救急救命士のOB)の人たちと相談員(専任のナース)の人たちの対応をモニターしていて、その対応の相談にのることと判断をapproveすることが僕の役目。かなりの数の相談があるのだけれど、(精神的に)病んでいる人たちの多いことよ。先日来読んでいる「ひとりで生きられないのも芸のうち」(文春文庫)の中にもあった内田樹さんの警句:「公的なもの」は盤石であるので、いくら批判しても構わないし、むしろ無慈悲な批判に曝されることで、その公的なものはますます強固で効率的なものに改善されるであろう・・・という、日本社会の「根拠のない楽観」ということを、ふと思い出したりして。なぜ相談センターでそう思ったかについて、ここに書き始めると大論文になってしまいそうだから止める(笑)けれど、今の日本社会が「システムとして抱える脆弱性」の一つであることは確か。その後、共栄スマトラカレー@神保町>施設往診@瀬田のルーティンを終えて・・・

夜は、映画「ウォールストリート」へ。オリヴァー・ストーン監督、マイケル・ダグラス主演。1987年の「ウォール街」の20年後の話。サブプライム問題を経験してみれば、1987年の状況がいかに牧歌的で穏やかなものだったのか・・・がよくわかる。前作のエピソードの後、インサイダーの重犯罪で8年間塀の中にぶち込まれていたゴードンが娑婆に帰ってくるところからストーリーがはじまる。続編としてのイヤらしさはなく、ストーリーとしては安心して面白い話。前作の敵役だったチャーリー・シーンがちょい役で出てきたりするのは監督のお遊びだろう。この20年で映像テクノロジーは格段に進んだというのがよくわかる映像。普通っぽいのに、これはどうやって撮影しているんだろう、という映像がいくつかあった。冒頭でウォールストリートのストリートからビルに揺れて回りながら上昇して行く場面と、ウィーニーとジェイコブが喧嘩して別れる場面のカメラの視点の動き方は斬新。

1987年の「ウォール街」のマイケル・ダグラスはギラギラしていて、もろ肉食系だった。アル中とかセックス依存症の告白で、あの当時随分話題になったもんだ。20年経っていい感じで老けて「悪いジジイ」になっていて、たぶん僕も含めて観客に自分たちの経験したこの20年間を憶い出させる仕掛け。その監督の演出はさすが。ゴードンの娘役のキャリー・マリガンはキュート。個性的で巧い女優。なんとなく「イギリス人の大竹しのぶ(若い頃)」って感じだな。ストーリは、ゴードンが言う"Greed is good."というのがキーワード。このゴードンが善玉なのか悪役なのか・・・結局、最後まで観てもよくわからなかった。そういえば、ジェイコブだって、いい奴なんだけれど欲深い奴にも見えて「わからない」キャラだ。この「わからないところ」がオリヴァー・ストーン大監督の意図するところなんだろうね。現在のウォールストリートのセレブ生活はわりと抑えて描かれているのは、本物っぽくいい感じで観客は感情移入できる。ストーリー展開はそれなりに面白かったけれど、エンディングの場面は蛇足だと思う。☆☆☆1/2 
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