1984年。外科研修医として1年間の出張を命じられた。行き先は福島県郡山市。病院近くのアパートに住み、病院からの呼び出しが頻繁にあったものの、公私共に充実した素晴らしい日々だった。楽しい思い出の数々。本当に福島の人たちって、温かくて親切な人が多い。美人も多いし性格のいい人も多く最高だった。当時は独身でモテたし(笑)。
さて赴任して、困ったのはやはり言葉の問題だ。東京生まれ東京育ちの僕にとって、ある意味「いわゆる福島弁」が悩みの種だった。若い人たちはバイリンガルなので問題ないのだが、特にお年寄りは時々コミュニケーションが取れない場合があった。訛りは会津、中通り、浜通りの3種類があって全然ちがう。さらに一番困ったのが地方ごとの言い回し。ということで、外来についてくれるナースに「ねえねえ、どういう意味?」とか小声で聞いて対応していたのだ。いわゆる通訳。
たとえば、患者さんに外来で「傷がねばってきた」とか言われた場合、僕とすれば焦って、化膿したのか?と思ったら、患者さんは逆でニコニコして「キズが治ってきた」という意味だったりして。
さて夏前のある日の外来。高校生の男の子とその子の付添のばーちゃんが外来に来た。食欲不振で元気がないというのがその訴え。
一通り診察をして問診。
体重は減っていないという。
軽い貧血があるかな?という程度。
元気で大きな病気が隠れているように見えない。
「せんぜ、この子「そぐぜぎ」ばかり食べるんです」と、
ばあさんが訴える。
ん? そぐぜぎ? 何か僕の知らない食べ物なんだろうか?
と、男の子の方を観ると、うつむいて恥ずかしそうにしている。
特殊な食べ物かもしれないと思ってナースに、小さな声で…
ねえねえ、「そぐぜぎ」って何のこと?
それを聞いて、そのナースは大爆笑!
涙を流して笑っている。僕以外は爆笑〜苦笑
男の子もばあちゃんも「なははは…」と苦笑。
「即席ラーメン」のことですよ!と。
ナーステーションのスタッフ一同、ぎゃははは、と涙を流してる。
これには僕が脱力、
なーるほど、と納得
さらに大爆笑となった。
その後何ヶ月間、僕は「そぐぜき」というアダ名を頂いた(笑)。
懐かしい思い出だ。
NHK「八重の桜」を観ていて久しぶりに思いだした。