1月24日木曜日。夜7時半ごろ田園都市線渋谷駅に到着すると、5時半ころ起きた人身事故の影響で電車が遅れて大混雑。ホームへの入場制限で20分くらい待たされて、やっと乗った電車はぎゅーぎゅー詰め状態で乗客はいらいらしているところで、さらに桜新町直前で緊急停車。用賀駅でレール故障!開けられる車両のドアからホームへ降りるとホームはさらに大混雑。どうも復旧までにさらに時間がかかるらしい。ホームでは携帯電話もワンセグもインターネットも繋がらないので、仕方なくどこかでタクシーを捜すかな、と歩き始めると・・・ホームの先のほうに救急隊がいる。
どうやらこの大混雑で気分の悪くなった人達が多数出たらしい。人の流れに逆らって救急隊のほうへ向かい協力を申し出る。僕は医師会の救急担当理事だし、現場が世田谷なので、顔見知りの救急隊員が多数。「あれー!先生、こんなところで会うなんて!協力宜しくお願いします!!」」ということに(笑)。
その後は、桜新町のホームで、次々と運び出される人達の救護とトリアージを行う。傷病者の総数17名、うち搬送8名。あの状況でパニックになってしまい過換気になって気分が悪くなった人や起立性低血圧(立ちくらみ)の人などの軽症がほとんどだったけど、中には病院への搬送が必要な人もいて、パニック障害の発作を起こした女性、狭心症の男性を自分の病院に連絡して搬送した。
あれだけの人が居たんだから、何人か同業者のドクターがいたはずなんだけど、結局医者は僕一人(怒)。自分はナースですと申し出た女性2名、心理カウンセラーだという男性1名、CPRの講習を受けていて何か手伝えないか?と申し出た男性1名。大多数の乗客は、野次馬ないしは無関心。傷病者をホームから道路まで搬送する手伝いとか道を開けて誘導する手伝いとかのボランティアを申し出る人は一人もいない。そんな状況でさえ、事故処理にあたってテンヤワンヤの東急の職員にクレームを付けている(つるし上げていると言った方が適切か?)アホ達も十数名いたりして。大地震・大災害が東京を襲ったら、どうなるんだろう!
電車が走り出したのが10時少し前。幸いすべての傷病者は処理して事なきを得たということで。6隊出動した救急隊が撤収を開始したのが11時ころだった。ふー、大事に至らずよかったよかった。その後、記者の取材を受けて帰宅。ニュースを見たら17万人が足止めされて大混乱だったらしい。やれやれ。
翌25日の朝、消防庁から感謝状を贈りますという連絡を頂いたけれど、丁重にお断りする。だって当たり前のことしただけなんだから。それにしても、「大群衆のパニック」っていうのを現場で体験してみると、いろんなことがわかる。不謹慎かもしれないけど、いい経験になった。