助けあいジャパン

July 8, 2010

弱いので強い

精神医学的な疾患があり、社会適応性に問題がある人たち。統合失調症の特徴は「自分が病気である」という意識がない(「病識がない」という)ことで、人格障害(パーソナリティ障害)の人たちとともに、周囲の人たちを振り回しまくる。明らかに「この人は異常だ」と周囲の人たちが認識できる場合は、ある意味で状況を把握しやすいので、まだ「まし」なのだ。でも、それが境界型人格障害とか、治療でマスクされた統合失調の場合には、一見礼儀正しいし、知能障害もないし、論理的にも辻褄があっていることも多いので、逆に中途半端に関わると厄介な状況になってしまう。我々医療のプロでさえ騙されてしまうことも多いのだ。

フィクションとしてぼかしておくけど、先日こんなことがあった。

早朝に救急搬送されてきた35歳女性。5年前に子供の出産を契機に統合失調症を発病。詳細不明だが、様々な「事件」があったのだろう。5年間精神科の病院に入院収容されていて先日退院、(家族とは離れて:離されて)一人暮らしを始めた。話を聞いてみると・・・夫からDVを受けていて、一時期シェルターに入ったことがある、子供に会いにいったら両親に逆切れされて傷ついた、そんな夫から子供の引き取ろうと思うが今は仕事がなく生活保護を受けるしかない・・・。「自分はもう治っているのに、世間の偏見で差別されている」と。彼女の話だけを聞いていれば、可哀想な境遇で同情されてしかるべき「社会的弱者」なのだと。

でも、冷静にニュートラルな視点で俯瞰すると、全く違ったことになる。

彼女の言葉には、そこに至るまでの彼女の行動についての情報が全く欠如している。たぶん周囲の「普通の人たち」にとっては「修羅場」だったのだろう・・・と想像できるのだ。エキセントリックな行動で振り回しまくって、周囲は疲れきってしまったはずなのだ。だからその「5年間の(強制)入院」があって、「今の状況」があるはずなのだ。

そのストーリーを斟酌すると・・・どちらが「弱者」なのかは明らかではないか?と思うのだ。

そのケースの場合の唯一無二の方法は、彼女の話を出来るだけ冷静に傾聴して「まあまあ」と、その混乱を執りなして帰宅させ、かわいそうな当事者達に問題を解決してもらうということなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。医者が何かできるなんて考えない方がいい。冷たいようだけれど。
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