急峻な勾配の丘を越えたら、次は緩やかなカーブの坂道だった。僕は何回か軽くブレーキを踏み込んでいたから、小さな踊りを舞うように飛び跳ねる、フロントガラスの水滴も、それに呼応するように小さく揺れる。冬の夕暮れはつるべ落とし。冷たい夜が突然、唐突に始まる。ステージの幕が上がるように。午後から降りだした今日の雨は、儚く脆く、小さく空間を漂うように存在し、そして冷たかった。靄のように心細い。でも、この雨は、この季節のこの土地のいつもの情景であることはわかっていたから・・・。
大きなRの左カーブを過ぎると、西の方角にぼんやりと街の明かりが見えてきた。オレンジ色とレモン色のグラデーションに、蒼白の輝点が散在する。あと15分もすれば到着するのだ、あの街に。
そんな雨の夜には・・・