「ジョーカー・ゲーム」 柳広司(角川文庫)
今更なんだけれど、忘れないうちに記しておこう。半月くらい前に読んだ。新刊の時から話題で確か「本屋大賞」か何かを貰っていたと思う。書店に平積みになっていて、巷の評判が高ければ高いほど僕は余程の事がなければ手に取らない。もともと天の邪気ということとケチだから(笑)。一番の理由は本は持って歩いていろんな状況で読む(例えば電車での移動中とか)なのでポータイリティが大切なのだ。ということで、今回文庫本になって初めて読んだ。同時多読だったので数日かかったけれど、集中すれば3時間で読めるだろう。スパイゲームのエンターテインメント小説。太平洋戦争前の日本の諜報機関養成学校の話。中野学校がモデルになっているのは明白なのだけれど、僕らの世代にはすごく懐かしいのだな。昭和30年代の少年達のエンターテインメント漫画や映画やプラモデルにおける大きなテーマは「戦争」だったし、明治時代から続く国際諜報戦における日本スパイの活躍(日露戦争の明石大尉のヨーロッパでの活躍)から始まり、戦前の中野学校のスパイ養成学校の話など、僕らにはどれもワクワクものの題材だったのだ。今思い返してみても、今の自分の右翼傾向とかスパイのダンディズムとかニヒリズムに対するシンパシーとかは、この時期に形成されたと思う。さはさりながら、この小説は「あの雰囲気」満載で、小説の構成や着想展開も飽きさせない。この結城中佐と彼を取り巻く男達のスパイゲームに、しっかりハマってしまった。作者の「思うつぼ」にどっぷりとハマれればこれほど気持ちのいい事はない。早く続編出ないかな。☆☆☆☆。
閑話休題、今朝の産經新聞での山川あらため「大山捨松」女史の話もすごく心に残るエピソード。寡聞にして知らなかったけれど、幕末の会津藩(つまり朝敵とされた)の幕僚の娘として生まれた捨松が、津田梅子(津田塾の創立者)とともにアメリカに渡りアメリカの近代女性とともに第一線の教育を受けて日本に帰り、明治から大正にかけてのセレビリティの星として輝いたという話。今は居ない、いわゆる「鹿鳴館」の時代から大正初期の国を背負った「本物のセレブ」の話だ。以前から僕は、①あの時代に日本の若い女性をアメリカに留学させようとした当時の日本の知識人の胆力と先見性、さらに彼らの財力、②その期待に応えた女性たち。③彼女たちがその後の日本社会(アジア社会ともいえる)に与えた多大な影響などに、興味があった。さらにその捨松さん(魅力的な女性)とあの時代に「恋愛結婚」をした大山巌にも興味が広がる。薩摩隼人が会津藩の娘と結婚するというのは当時の常識から言えば、まさにドラマだろう。また調べたいことが一つ見つかった。NHK大河ドラマでやって欲しい、是非!
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