助けあいジャパン

July 2, 2008

妄想構築

Fさんは、永い間自由が丘でお店をやっていて数年前に引退、今は悠々自適の生活をしているお爺さん。転倒して骨折をしてしまって以来、最近は認知症(老人性痴呆)が出てきて、ご自分もご家族も苦労されている。でも、彼の症状は他人に迷惑をかけるわけじゃなくて、周囲を和ませるようなボケなのだ。

今日は、一ヶ月に一度の外来で、娘さんに来院された。実は診察の前に娘さんから、Fさんが最近は自宅に引きこもりがちということで、近所のデイ・サービスに行くように僕から勧めて欲しいとの依頼があったのだ。娘さん曰く、主治医の僕の話は聞いてくれるので、ということだった。

一通りの診察を終わった後、

「Fさん、デイ・サービスって楽しいらしいですよ。ご自宅まで車でお迎えに来てくれるみたいだし・・・」
「ヤだな、そういうのは。だって友達も居ないし。仲間はみーーんな死んじゃったんだよ。」
「はあ・・・」

「①米屋のXXは、酒の飲み過ぎで死んじゃったし、②駅向こうの蕎麦屋のXXさんは、風呂場で溺れて死んじゃったし、③同級生のXXXは別れた奥さんに、殺されたし・・・、④XXXXなんて一家皆殺しだし・・・」

「えええっ!(絶句)、そりゃFさん、大変ですね!!(すごいドラマ&事件じゃん!)」

後ろで娘さんが「苦笑」している・・・

「はっ?」

娘さんが困った様子で、口パクで・・・娘さんが「全部ウソ。皆さん元気です・・・」と。

「はあ?????」

つまり、彼の妄想。最近のいろんな血なまぐさい事件のニュースと現実がごっちゃ混ぜになっているようだ。

「Fさん、大丈夫ですよ。新しいお友達もできるでしょうし、女性のほうが多いからモテますよ、きっと。」

「だって、女っていっても婆さんばっかりじゃイヤだよぉ(笑)。ボケた爺さん相手の将棋なんてつまらないし。」

お話をしながら、僕はFさんがもしかしたらぜーんぶ解っていてボケたフリをしているんじゃないか・・・?って思ったりした。被害妄想や失見当識は一般的で周囲に迷惑をかけてしまう事も多いんだけど、こいう妄想構築は珍しい。ユーモアと妄想が混ざっているみたい。娘さんの話では、いい時と悪い時の「波」がずいぶんあるみたい・・・だけれど。

午後から、埼玉の看護学校で90分講義のダブルヘッダー、2コマ。今日の学生さんは積極的だし意欲があったな。充実感のある疲れ。ジムに寄り今日は久しぶりに20本1000mをがっつり泳いてリラックスしバランスをとる。
Powered By Blogger