医療を取り巻く様々な厳しい状況が、世の中でいろんな歪みを引き起こしている。「医療崩壊」という、いわば自嘲的な言い方は好きじゃないけれど、現在の医療の偏在:医師不足は確かに深刻な問題だ。ココには本業の仕事関連のテーマはなるべく書かないようにしているけれど、今日読んだ日経メディカルの記事の「外科崩壊」というテーマには考えさせられた。
アメリカとニュージーランドで外科医として仕事をしていた関係で、日本の外科医の置かれている状況の過酷さは、身を持って感じるのだけれど、日本の未来を担う若い世代の医師が、将来外科を目指さなくなっている現状はかなり問題なのだ。たしかに自分のキャリアを思い返してみるに、時間的にも経済的にも厳しい修業時代を、今の若い世代に同じように求めるのは酷な気がする。僕の場合には、「そんなものなのだ」と諦めていた気がするけど、今の時代じゃ無理だろう。週80時間勤務とか普通だったし。一人前になってからも、あまりにも日本の医療制度では外科医の報酬(労働対価)が低すぎるのだ。欧米の僕と同年代の外科医でアドミの立場の同僚達との生活のレベルの差たるや、もう笑っちゃうしかない位の差がある。もちろん外科医のお金の問題だけじゃないけど、これからの日本の医療では外科医は少数精鋭というか、手術以外の雑務に翻弄されないプロの職人の世界になってゆくしかないんだろうと思う。ここら辺の話はどこかで書いておかないといけないな、やっぱり。日本の医者は、あまりにもおとなしすぎる。サイレントマジョリティの意見を出せない医師会は存在意味がない。
日本の社会では医療は基本的にはタダであるもの、という間違った認識があるんじゃないかと思う。社会保障費にどれだけ十分にかけられるか?というのが本当に豊かな国の条件なのだ。