95歳。今朝主治医が心配して救急車で入院となった。ご自分では満足に声が出ないので筆談でコミュニケーションをとる。達筆で書かれた文字。「俺は病人じゃない。お前達(息子さんご夫婦)は、俺をこんなところ(つまり僕の病院だ)に入れるのか。俺は家に帰る。」と。
医学的には問題だらけのご老人なんだけれど、精神の幹はしっかりとしている。すごい人だ、と思う。東大法学部を出て、精一杯頑張って今の日本の社会を築き上げてきた「自負」がある。僕みたいな、へなちょこ医者なんて鼻にもかけない。
息子さんとお話する。彼の意思を尊重しましょう、と。彼の気持ちと医学的な判断の折衷案で、この週末は(彼としては不本意ながら)点滴をしましょうということになった。
大正、昭和、平成を生き抜いてきた人の言葉の重み。