助けあいジャパン

November 25, 2011

ロバの耳に糸電話

紗高樓綺譚「糸電話」(浅田次郎)。この短編もぞっとする話だ。主人公は精神科医。幼少時に出会った薄幸の少女との「予期せぬ偶然の出会い」が繰り返される。統合失調症や人格障害という「病気」であればまだ救いがあるのだけれど、「そうではなかった」という設定のコワさ。底なしの暗黒を覗き込んだような読後感になる。小説の中でこまごまと状況設定の描写をしすぎないことが、さらにコワさを増すという技に、唸ってしまった。天才の技に翻弄される快感なのだな。

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「王様の耳はロバの耳」についてのメモランダム:

FB友達のHさんの文章で再認識したイソップ寓話。僕もそのあらすじを誤って憶えていた。

王様の耳がロバの耳で、その髪の毛を刈る床屋が口止めされているにも関わらず、どうしても誰かに話したくて井戸に向かって「王様の耳はロバの耳だ」と話す。するとその声が全ての井戸に通じていて街中に広がって聞こえてしまう。王様が困って、耳について「これは皆の意見を良く聞けるように ロバの耳になっている」と弁解する。噂の広がりのコワさと、切羽詰まったとしても、誤摩化すことは悪い事だ、正直であれ!という教訓を表していると僕は思い込んでいた。


しかし、正しくはもっと深い話らしい。


アポロンを侮辱したミダス王。アポロンに懲罰として、無理矢理その願いを叶えられるという罰を与えられる。手で触れるものすべてが黄金になってしまうのだ。黄金を得る代わりにすべてを失ってしまう、という過酷な罰。反省して許しを乞うミダス王。それでは...と、アポロンはミダス王の耳を「ロバの耳」にしてしまう寓話がベースにある。そして、前述した話に続くのだが、結末が全然違う。


ロバの耳の秘密をバラした床屋を殺そうとする王様。しかし、その時彼は気がつく。自分だってアポロンに殺されていたかもしれないくらいの罪を犯したではないか。それを寛容したアポロンの慈悲に気付くのだ。そこにアポロンが現れ、「よく気がついたな。お前の罪を解いてやろう!」とロバの耳を治してくれました、という結末。つまりこの寓話の教訓は、人間の寛容について述べたものだという。


ふーーむ。なるほど。たしかに子供の頃、そんな劇を観た気がする。

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