この時期恒例の仕事関連の新春観劇会@明治座。毎年舞台に登壇して、挨拶をすることになっている(ただ坐っているだけだけれど<笑)。このデジャヴ感覚。去年の登壇からもう1年が過ぎたんだと、感慨に浸る。舞台の上で40分間くらいのセレモニーの間に、去年の様々な出来事を思い起こし振り返ると、まさに光陰矢の如しだ。
今日の舞台は、萩本欽一主演の「いかん・どっかん・あっけらかん」という江戸もの人情喜劇。「欽ちゃん」の笑いって、いかにも昭和的で、ほのぼのと温かく「ははは」と安心して笑える種類の喜劇。とはいえ、昭和40年代にコント55号が出てきた頃には、彼らの体を張って動くギャグとか「なんでそーなるの?」的なナンセンスな笑いは、その時代的には先鋭的だったことを考えれば、笑いの出し手も受け手もずいぶん変遷したものだ。最近のお笑い芸人達の勢いだけの過激なギャグや瞬間芸的な笑いとは、根本的に違うってことが、今日は実感できた感じ。萩本欽一というキャラクターが、単なるお笑い芸人から、いつの間にか「みんなが大好きないい人」の代表選手になってしまったので、彼が舞台に出てきて「欽ちゃんオーラ」だけで観客は満足できるし、彼の台詞や動きに一緒に連動して「笑う準備」がすでにできている。どんな笑いか予想できるから安心して笑えるというパラドックス。考えてみればこれはスゴいことで、その意味からも彼は当代一流の「喜劇人」だ。実際観た事はないけれど、たぶんエノケンなんかもそんな資質をもった人だったんだろう。たけしは「あっちの方向」に行ってしまったけれど、欽ちゃんは「庶民のアイドル」的な親密感のあるキャラを保っているのが、スゴい。
脇を固める田中美佐子と小倉久寛は、さすがに巧い。特に田中美佐子ってテレビではアンニュイでハスッぱな「姉御」的なキャラの役が多くて、そのイメージが染み付いてしまっていたけれど、実はこんなに巧いコメディエンヌだったんだね。松居直美、風見しんごなどの軍団はお約束としても、とにかく「安心」して「欽ちゃんワールド」に浸れる舞台だった。相方の坂上二郎さんは去年8月に倒れて生舞台に出られなかったのが残念。欽ちゃん69歳、ジロさん76歳だもんね、仕方がないといえば仕方がない。「コント55号 THE LAST」だそうな。