January 18, 2008

明日の広告

さとなお君の新刊「明日の広告」アスキー新書。広告業界の外側にいる僕ら(というか広告の受け手:消費者)にとって、広告が「コミュニケーションの方法論」のひとつであるという発想自体が、目からウロコなんだよね。その世界では常識なんだろうけど。うん、確かにその通りだと思う。でも、コミュニケーションというからには、双方向の流れがあるはずなんだけど、それがなされていなかったってことなんだろう。インターネットの時代になって、その当たり前のことが明白になったってことか。

従来の(一方通行の)広告っていうのは、消費者にヘンに媚びていたり、やけにタカビーだったり、奇を衒ったりすることばかりに力が入っていたりて、衆愚的な大衆を相手にしたものだった、と思う。夢のような消費生活に憧れた高度成長期や、モノと金に浮かれたバブル期、ソレに続く失われた10年、IT革命(死語か<笑)と加速度的に増える情報の洪水・・・を経験した消費者は、もはや従来の方法論では「モノを買わなくなった」「心を動かされなくなった」って事。そう、最近の情報の洪水の中で、いろんなメディアから流れてくる膨大な情報に相対して、僕ら消費者は食傷気味というか、斜に構えて受け流すことが、自己防衛のためのフツーの態度になってきていたわけだ。この本で、色んな角度から非常に丁寧に述べられている「消費者が変わったのだ」という記述を読んで、うんうん、そうなんだよね・・・と腑に落ちた。

この本にある、スラムダンクのキャンペーンの話は感動的だ。新しい広告の予感がする話。

あえてツッコミをいれるとすれば、「消費者を味方に付ける」とか「消費者の立場・視点に立って」とか「とことん消費者を分析して戦略を立てて」とか「消費者をパートナーに」っていうのは、広告業界にとっては昔も今も当たり前すぎるくらい当たり前のことなんだろうなって感じた。だって昔から「心に残るいい広告」っていうのは、そういうもんなんだもん。つまり、極言すれば一般的なテクニックの問題よりも、一番のポイントは、その広告を作る個人&チームの資質とセンス+コンテンツを作り上げる力量(技術力)なんだろうって思う。

とはいえ、広告を作る側の意識が変わってくれれば、僕ら消費者にとっても、もっともっと面白いことが起こってきそうな気がする。この本を読んで、これからが楽しみって素直に思えた。広告はエンターテインメントなんだから。

清々しい読了感。