August 29, 2013

王様の金庫(小説)

王様の金庫(寓話)
2007-9-25再掲載
2013-8-23 再々revised

昔々のある日の午後、王様が一番信頼できる家来達に言った。

「わしは、大切な宝物が一杯ある。我が王国の賢者達よ、その宝物をわしが安心して置いておける金庫を作って欲しい。絶対に開けられない金庫じゃ」

一番賢者アーサーが言った「恐れながら王様、{絶対に開けられない金庫}というのは矛盾しています。{王様だけが開けられる}という意味ならわかりますが。」

「うむ、なるほど。賢者アーサーの言う通りじゃ。わし以外の誰もが開けられない金庫を作って欲しい」

「御意・・・・」

賢者達は考えた。

ある天才数学者は、連続的な解答不能の問いを繰り返す迷路を考え始め、

ある天才地質学者は、世界中で一番地質の安定した場所を探して、巨大な穴を掘り始め

ある天才天文学者は、ブラックホールの向こう側にある場所をスーパーコンピューター使い計算し始め

ある天才心理学者は、万人の心の奥底にある「欲望」という名の「空洞」を世界で一番深いマリアナ海溝の底まで捜しに行き

ある天才物理学者は、素子の「ささやき」と我々の宇宙の果てにある「時間のねじれ」の違いを考え始めた

さらに、ある天才医学者は、完璧な金庫を開ける権利のある王様のための不老不死の薬を研究した。

 そして1週間後、賢者達の会議で、第一賢者のアーサー議長が言った。

 「賢者達よ、君たちの結論は出たか?」賢者全員が大笑いをした。

 「議長! 私達の求めているのは{真理}なのです。それが1週間で見つかるわけがありません!」
と、物理学者と医学者が言った。

 他の賢者達も頷いた。

 王様が聞いた。「賢者達よ、それなら、どのくらいの時間が必要なのだ?」

 一番賢者のアーサーが代表して王様に答えた。「私達にもわかりません。しかし賢者は賢者なりのベストを尽くし、年老いた{王様の生きているうち}に解を見つけるべく鋭意努力します。」

議長が言った。「賢者達よ。汝等のベストを尽くすが良い。王様は待っておられる。」

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賢者達は何を見つけ出した???
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「で、この話の教訓は?」と彼女は言った。

「何にもないさ、だたそれだけの話さ」と僕。

「えっ?そんなことないでしょう?そんな筈はないわ。だって世界中の最高峰の頭脳を持った賢者達が一所懸命考えたんでしょう?」

「そうさ、そうだよ。でも賢者達は解を見けられなかったんだ。」

「じゃあ、王様は{絶対に開けられない金庫}は得られなかったってこと?」

「そうだよ。でも、彼は意外なことに、すごく身近に「最適解」を見つけたんだ。

{絶対に開けられない金庫の鍵}を」

「絶対に開けられない金庫は、出来たのね!」

「答えはYESでもありNOでもある。{絶対に開けられない金庫}なんて、初めから世の中に存在しないのさ。でも、王様はそれを判っていて賢者に命令した。そして、彼(王様)はその鍵を見つけたのさ。」

「私には解らないわ、あなたの寓話は。起承転結の結が見えないわ。」

「どんな金庫にも鍵は開けるためにあるんだ。開けられない金庫が存在したとしたら、その金庫には鍵はないはずだ。誰にも開けられない金庫は、それ自体自己矛盾なんだ。それは紀元前1600年の殷の時代の象形文字に記されているという。つまり{真理}なわけだ。」

ということは、アーサー卿が言っていたように、王様以外には開けられない、というのが正しい?

いや違う
開けられたくない人がいるから金庫の意味があるんだ。
誰にも開けられない金庫は、誰にでも開けられる

つまりどんな複雑な金庫を作っても、鍵の意味がないことを悟り
王様は鍵を捨てたんだ。

さらに金庫だけでなく、王様は王国から全ての鍵をなくしたんだ

その結果、泥棒や盗賊や盗人や怪盗はいなくなり
王国の民は皆で富を共有して
賢者達は、さらに素晴らしい賢者達になり
国はさらに栄えて
すばらしい王国になったとさ

う〜〜ん。
ちょっと待って??
あなたの話は「出来過ぎじゃないかしら」

ははは。
さすがだ。鋭い指摘だ。

ポイントは、そこで賢者達はさらに考えたことなんだ。
人間は常に進歩し続けるために。

新たな新進気鋭の若い天才数学者は、誰にでも簡単に複雑系の解をみつけられるシークエンスを考え始め

さらに若い天才地質学者は、世界中で一番地質の不安定な場所も生活できる別の巨大な穴を掘り始め

新しい天文学者は、ブラックホールの向こう側にある場所を、別の方法で計算し始め。。。

ある心理学者は、万人の心の奥底にある「希望」という名の「空洞」を火星の底まで捜しに行き

新人の物理学者チームは、素子の「ささやき」と我々の宇宙の果てにある「時間のねじれ」の違いを検証し

医学者たちは、王様のための不老不死の薬の研究は意味のない事をはじめて議論するようになった。

王国中の皆がそう考えるようになって、
初めて国中の人々が
大人も子供も安心して、
幸せに暮らせるようになったんだ。

で、その国の名は???


to be continued