人にわかりやすく説明することは容易ではない。複雑な事や抽象的な事であればあるほど難しい。演説や講義や講演の上手い人は、いかにも簡単そうに話をする。人に伝えるためには自分がその何倍も理解して自分の言葉で納得できていないと、うまく伝わらない。アナウンサー的に滑舌よくペラペラと話していても、「あ、この人わかっていないんだな」とか透けて見えることも多いし、そんな場合には「騙されないぞ!」と身構えてしまうこともある。テレビショッピングとかで、あまりにもペラペラとしゃべくりすぎると逆に売れないというのもわかる気がする。逆に訥々と話しているんだけれどすごくシンプルな言葉であっても、わかりやすい説明が出来る人もいる。ジョブスじゃないけれど、上手い人は皆人知れず努力して準備して練習しているのだ。先日ある人のレクチャーを聞いていてしみじみ思った。不思議なもので人というのは「本当に言いたいこと」は何回もくどくどと話してしまうものなのだ。自分が伝えたい事ばかり話をしていちゃダメだ。人のフリして我がフリ直そうって話なんだけれど。複雑で難しいことをやさしい言葉で話せるようになりたい。スピーチ文化のある欧米ではみんな本当に上手にスピーチをするんだけれど、これは個人の資質だけでなく子供の事からの経験なんだと思う。いいスピーチを多く聞けば自分の上手くなるだろうし、いいオーディエンスにもなる。
そうだ、難しい事をいとも簡単そうにできるのは技(テクニック)なのだ。たとえば手術が上手いと言われるような人の手術をみていると、いつも窮地に陥る事もなく淡々と簡単そうに手術をやっていることが多い。あたかもその名人は、「いつもイージー」なケースばかり当たるかのように見えるのだけれど、そこが違うのだ。これこそ達人の技(テクニック)ということで。武道の達人がいつも「勝てる相手としか闘わない」というのにちょっと似ている(似ていないか)。