May 29, 2011

「やせれば美人」高橋秀実(新潮文庫)


最近ハマっている高橋秀実さんのシリーズ。この本も抱腹絶倒。著者の妻のやせるための様々な努力や日々の出来事を、どう考えても力関係が下のちょっと情けない夫の「そのまんま」目線で書き綴っていく。この夫のイメージに自分を重ねる読者(男)は多いだろうな。僕も、もちろんそうですけれど(笑)。さらに、この人の(ある意味どーでもいいことを一所懸命に)調査する能力というか、緻密に資料を集め整理して分析する労力を惜しまない姿勢が健気(けなげ)でオカシイ。この著者の独自の妙に醒めた視線も小気味いいし、ちょっと自虐的な笑いがそこここに鏤められていて、「ふふふ」とか「うんうん」とか唸りながら2時間で読んでしまった。

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妻の「自分」はスケールが大きいのであった。言い換えると、彼女はデブになることで他の欲望を抑えている。デブになったせいで他の楽しみが何も出来ないと自分に言い聞かせている。ある意味、意に添って太っているわけで、デブでいることが欲望の防波堤の役目を果たしており、それが年々厚みを増しているのであった。ダムに喩えるなら、決壊を恐れてダム堤を増設しているようなものである。
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著者の妻だけでなく様々な女性が出てくるのだけれど、「やっぱり女ってわかんねー」というのがこれを読んだ大多数の男の感想だろうな(笑)。ああ、面白かった。