先日のアカデミー賞のスピーチとか観ていると、本当にみんな上手だ。もちろんエンターテインメントの世界で名をなしている人たちばかりだから、そのレベルはもともと高いんだけれど、それにしてもみんな巧い。シンプルな言葉と声、間、目線、説得力などなど。アメリカの病院で仕事をしていた時代(1980年代)に、話すプロじゃないごくふつうの職場の人たち(先輩や同僚や学生)が皆、流れるように上手なプレゼン(症例報告や研究発表など)をするのには、本当に感心したものだ。
欧米のスピーチ文化というのもあるかもしれない。イギリス人の弟子のマーク・アシュトン君の結婚式に出席した時には、多くの出席者が実に上手に心のこもったスピーチをするに感銘を受けたし、当日の主人公である新郎のマークが本番直前まで一所懸命スピーチの練習をしているのを見て、僕は英語圏しかわからないけれど彼らのスピーチ文化の深さに驚いたものだ。
「スティーブ・ジョブス驚異のプレゼン(人々を惹きつける18の法則)」(日経BP社)については、去年10月にも感想を書いているけれど、やはり上手なスピーチをするには人知れず準備と練習をすることが大切なのだ。この本のあとがきで解説の外山仁さんが書いているけれど、アメリカの子供達は小さい頃から"Show & Tell"という教育を受けていて、自分のことや家族のこと、日常起こった出来事や、自分の考えた事を人前でクラスの皆に発表させる時間がある。たしかに、ウチの娘達も学校で「きょうのニュース」とかやっていた(英語なのでその準備が大変だった)。人前で自分のことを表現するのは、人生の大切な基礎能力であることを皆は認識しているのだろう。でも、そのポイントは「人前で話すテクニック」を高める訓練ということではなくて、「自分の事を人にわかってもらえる喜びや共感する楽しさ」を学ぶ事なのだ。日本の学校でも同じなわけで、たぶんその先の教育システムと文化が異なっているんだろう。ま、それはそれとして、そういう文化で育った彼らが、さらに訓練と練習で磨きをかけたスピーチは、やっぱり素晴らしいわけだ。 なるほどね。