Nさんがディレクションしたアルバム、因幡晃「まん丸の蒼い月」。ほぼ同世代で、ポプコンの「わかってください」が大ヒットした。このアルバムは35周年記念とのこと。彼のきーんとサスティーンの利いた歌声は、今でも健在で「ああ、この人歌がうまいなあ」と。
基本的な声質が良いのだな。だから当時から、歌はうまくないけれど内容で勝負します・・・的な「フォーク」とは一線を画していた。このアルバムで彼は、当時のような熱唱系の歌い方ではなく、今の年齢なりにいい感じの「抜け」をだして歌っている。特にセルフカヴァーの「わかって下さい」は素晴らしかった。オリジナルよりも数段好きかも。タイトル曲の「まん丸の蒼い月」も秀逸。とくに歌詞には年代的に共感。「ベッドサイド」は、深い哀しみの中で絞り出すような最高のラブソングだと思う。若い頃の熱い燃えるような愛情とはちがって、じっくりと包み込むこんで温めるような愛情もある。そのことがわかっている大人のラブソング。このアルバムはピアノを中心としたミニマムの編成で因幡晃の歌を聴かせるというコンセプト。さらにスタジオライブレコーディングとのこと。デジタルでいくらでも切ったり繋いだりできる今の時代では希有なこと。スタジオ内のミュージシャン達の真剣勝負のプレイの緊張感とか息づかいとかも感じられて、このアナログ的で直感的な感性は素晴らしいと思う。やっぱり音楽の基本はライブだと思うから。それに応えるプロはやはりスゴいと感嘆した。
全体の印象は「真っ白な紙上で、極太の筆で書を描いて表現している」感じというか。さすがプロの仕事。