ジムの帰り道。新しくリニューアルして美しくなった、たまプラーザの駅改札口で若い男女が延々とディープキスをしていた。ふたりの世界に入っていて、周囲の目なんて全然気にしていないみたいだ。現代の日本社会において、男女が「普通の挨拶以上かつ普通のセックス以下」の状況で、公衆の面前でキスをするということは、完全に認知された感がある。僕ら大人も含めて「ま、いいんじゃない。別に人に迷惑をかけてる訳じゃないし・・・」って感じで、無視してる。30年前だったら大騒ぎだし、下手すりゃ逮捕されちゃっただろう。「仕方ない」とか「僕らが口を出すことじゃない」という意識はあるんだけど、公序良俗を害する違法行為っていう感じはたしかにないかも。
21世紀を境にして、日本の社会のマナーというかその根底にある倫理観は一気に変化した感じがする。恥じらいなんて全然なくて、あっけらかんとしている彼らをみていると僕らの世代の若い頃との違いを感じる。やっぱり僕らの世代は、「海岸通りの物陰」あたりで、密やかにスルのが正しい作法だった(「月光恋歌」参照>笑)んだ。
ちょっと違う話だけれど、僕は未だに雑誌を読んでいてヌードのページとか、性的描写のある小説なんかは電車のなかでは開けられない。この歳になってもハズカしい。期せずしてそんなページになってしまったら、さりげなくページを繰ったりして(笑)。よーく考えてみれば、意識しずぎで、その行為自体が逆にハズカシいんだけど(爆)。だから、来週の「予習」で村山由佳さんの「ダブル・ファンタジー」を電車の中で再読するのに、妙に周囲を意識して汗をかいたりしてね。バッカみたいだけど、僕らの「恥じらいの基準になる倫理観」ってのはそんなもんで、この感覚は一生変わるもんじゃないんだろうと思う。