August 22, 2009

台湾LOVE2009(その2)故宮博物院再訪

4時半にバチッと目覚める。日本時間で5時半。まったく律儀な体内リズムだ(笑)。熱いシャワーを浴びてネットを観ていたら、もう空腹感で堪らず、6時(だって日本時間では7時だ)からの朝食バイキングの一番乗り。本当は、朝食は街の屋台の豆漿(豆乳)を食べにいきたいところなのだけれど、朝のルーティンを考えると残念ながら、ちょっと躊躇しちゃうのだ。仕方なく次善の策としてホテルの朝食バイキングで豆漿と揚げパン、大量(大振りのサラダボウルで2杯)のサラダとフルーツ、ベーコンエッグとポテト、中華風の漬け物など。

さて、今日はこの旅のメインイベントの国立故宮博物院へ。朝食をゆっくり食べ終わってもまだ7時前、じっくりと下調べをすることにした。8時半出発。MRTで「士林驛」へ。そこから一般バスに乗り故宮博物院へ向かう。新装大改築したので、以前訪れた時とは全然違って建物そのものが洗練された印象。日本語のオーディオガイドを頼んで、早速一番上の階からじっくりと解説を聴きつつ展示を回る。大陸からの観光客の団体多数。一般人への渡航自由化の結果なんだろう。「一つの中国」という大陸の人たちの考え方からすれば、この故宮の財宝の所有権に関しては複雑なものが有るんだろうけど。ま、それはそれ。蛇足になるけれど、展示物は清の時代までで、現代に至るまでの中華民国と中華人民共和国の歴史については、あえて沈黙を守っている感じ。


展示は時代別になっていて石器時代から近代に至るまでの中国の歴史と文化の変遷を感じる事が出来る。日本列島の古代人たちが腰蓑付けて走り回っていた時代に、確実に「より人間らしい文明」をもって生活をしていたわけだもの。殷・周・春秋戦国と続き、秦・漢で大中華のアイデンティティを確立し、三国(漢族と満族と蒙古の戦いなんだな、結局)・南北朝を経て随・唐へ。このころから日本文化への影響がぐっと大きくなる。宋・元と拡大し明の時代に中国文化は洗練され、清朝の帝国になって爛熟する。その壮大かつ悠久の時間の流れ。中華民族の徹底的で偏執狂的な「美に対するこだわり」には本当に感嘆する。

今回は蒼穹の昴を読んでいたので、今回は特に清の時代の宝物が面白かった。最も偉大な乾隆帝の時代の宝物が印象的。とにかく圧倒的な感じ。「磁胎洋彩百禄双耳輝」:大きな壷に鹿山の様子を3Dで「球面」描いている。どこから観ても絵が連続するのがすごい。有名な翠玉白菜や肉形石、九層象牙球も、もちろんすごいんだけれど、清の時代の偏執狂的なミニチュアの世界(例えば陳祖の小舟とか翡翠の精緻なミニチュアとか)の技巧にも感動する。千字文の展示。天地玄黄・宇宙洪荒。いろんな形態や流儀の千字文があるんだな。昔から中国の絵画も好き。「清明上河圖」。20Mくらいの細長い上に延々と繊細な筆で描かれた庶民の生活。ストーリーがあるのが素晴しい。前回訪問時には、これとは違った絵巻物で、村の歴史を表した巻物が展示してあって、今回もそれが観たかった(名称失念)のだけれど、今回は見つけられず。でも有名なこの「清明上河圓」もさすがに素晴しく、このコーナーでじっくりと1時間過ごした。至福の時。


昼ご飯は本館4階にある「三希堂」(乾隆帝の書斎の名前)にて点心飲茶。このフカヒレのワンタンスープが絶品だった。フカヒレの他に貝柱、海老、タケノコ、鶏肉、金華ハムなど。濃厚にしてあっさり、でもコクと香りが素晴しい。さらに、点心の皮の柔らかさは特筆もの。画像はその絶品フカヒレワンタン入りスープ。画像をクリックすると大きくなってそのおいしさがわかるかも(笑)。その他の飲茶点心は海鮮蒸し餃子、蟹の焼売などで、凍頂烏龍茶で頂く。これでも160NT$. (500円くらい)!


「陳其寛」という建築家にして芸術家の特別展示をやっていた。その世界では有名な人なのだろうけど、まったく名前も知らず、せっかくなので入ってみたら、これがBINGO、大正解! もしかしたら、今回の故宮での最大に収穫かも。建築家であり書道家でもあり画家でもある天才。空間的な表現がすごくユニーク。「水の底の方から水面に向かって観た風景」とか、鳥肌が立った。予定調和的に自分なりに盛り上がっていた気持ちに風穴を空けた感じ、というか。早速充実しているスーヴェニアショプで、作品集とポストカードなどを買い込む。結局7時間近く故宮で過ごしたことになる。

帰路も一般バス。ところが系統が違ったのか乗ったところには戻らないで、士林の街の全然知らない場所を走っている。まあ、台北市内だしどこに連れて行かれようともタクシーさえ拾えれば何とかなるだろうと、そのままにしていたら、どんどん知らない街並みになってしまい、となりの席のおっさんに地図を見せて「わたし・にほんじん・MRT士林(しーりん)はどこですか?』と聞くと、ふふふと不敵に笑い、「そのままで大丈夫だから座ってな」みたいなニュアンスの言葉を返される。彼が地図で説明するには、このバスは故宮と士林と劍鐔を循環しているらしい、ということ。そっかそっか、MRTの劍鐔に行ければ大丈夫だと安心。その後もおっさんが何やら親しげに話しかけてくるけど、全然会話が成立せず、えへらえへらしてごまかしているうちに劍鐔に到着。おっさんとその家族も降りた。「謝謝」といって別れ、せっかくだから士林市場を覗いていくかな、と交差点を渡ろうとしたら、さっきのおっさんがすっ飛んできて「ちがうちがう、お前の乗るMRTは反対の方向だ」と教えてくれた。説明する自信はないので彼の好意を無にしないように言葉に従う事とした。こういうところが台湾の人たちのおせっかいなくらい親切な所なんだな。

ホテルに戻りシャワーを浴びてビールを飲んだら、さすがに疲れが出てちょっとだけ午睡してしまい、目覚めたらもう薄暗くなっていた。今日は長春路の「京鼎楼」へ。昼間が飲茶だったのでご飯ものが食べたく、去年食べた炒飯がおいしかったので、ホテルから至近のここんちにした。排骨玉子炒飯と海老雲呑湯、台北麦酒で400NT$.(1200円!)。安くて美味くてどーもすみませんって感じ。


帰路、街歩きで前から目をつけていた「京美健康養生廣場」に予約なして入ってみる。ちょっとドキドキ(笑)。やっぱり清潔であることと大通りに面していて、まさかぼったくることはなかろう、という感じの店を探していたのだ。日本のガイドブックに出ていないのも日本人観光客値段じゃないだろう、という予想もあって。対応してくれたのは同年代くらいのおばちゃん。片言の日本語でコースの説明。全身整体と脚底按摩90分のコース1500 NT$(4500円)。「中国古式穴位推拿按摩」だそうな。結論からいえば、すっごく良かった。日本であそこまで徹底的にマッサージしたら3倍はかかるだろう。「急所」以外(爆)の全身をくまなく、痛気持ちよく揉みほぐされ、日本ではちょっとないパターンの「痛気持ちよさ」の推拿でへろへろになってしまった。最後の方は、小柄なおばちゃんが、僕の足や腕とか背中とか肩に乗りつつ、反対の足でツボをぐぐぐぐっ、と推すので、あまりの気持ちよさに思わず唸ってしまった。終了後、お茶を頂いてそれを飲んでいたら、図表を見せながら説明してくれる。内臓は全く問題ないと、脚底(足裏)の圧痛では座骨神経と右肩甲骨の張りがあったとのこと。あなたは睡眠不足で疲れ気味だと(まあ、これは大部分の客に当てはまるだろうけど)。

実はさあ、おばちゃん「我是医師(わーしーいいし)」と言ったら、「うそー!」と笑われた。無精髭、Tシャツ、ぼろジーンズ、破れたキャップのおっさん(僕)が、それらしく見えなかったんだろうな(爆)。大満足、へろへろでホテルに帰還。