June 17, 2008

不潔と清潔

あ、これ医学的な話題。滅菌操作とか消毒処置とか僕らの仕事では「感染症」予防のノウハウがある。今の時代になってもたぶんこれからも人間が生きていく限り、医学の世界ではまだ感染症との闘いが続くわけだ。

で、今日書きたかったのは、衛生観念というのはずいぶん人によって、文化によって、国によって違うっていうこと。つまり「これは不潔だ」とか「これなら清潔だ」という観念というのは科学的根拠とは別のところで存在している。

僕らがアメリカに住んでいたとき、長女かなぴーが生まれハイハイをしだした頃、僕らは土足で歩く場所でハイハイさせたり、その床をべろべろ舐める(笑)彼女を、「うわー、だめだめっ!病気になっちゃう!」なんて言っていたけど、アメリカ人の親は全然平気。医学的に言えば確かに人間はそんなに弱くないんだけど、観念的に僕ら日本人は「ちょっとねー」って感じがある。

イギリス人の同僚と仕事場でランチ。彼女がちょっと用事があり立ち上がるときに食べていたサンドウィッチを机の上に、「そのまんま」おいたことにもショックを受けた。日本人ならお皿におくよな(笑)。逆に、同僚と当時LAで流行りだしたお寿司屋さんに行ったとき、「ねえ、マーク、素手で握って不潔じゃないの?」なんて聞かれてビックリした。

考えてみればお箸だって滅菌しているわけじゃないし、割り箸だってどれだけ汚染しているかわかったもんじゃない。ちょっと前に話題になった「賞味期限」の問題だって、かなり科学的には怪しいもんだ。

ニュージーランドでは、コーヒーを飲むときに同僚ドクターが白衣からボールペンを出して、クリームを入れてかき回すのにビックリした。日本じゃまずアリエナイ。ちなみに日本では一般的な「白衣」そのものがかなり「汚い」ということが解ってきて欧米では白衣を着ないのが一般的になってきてる。とくに医者のネクタイは最悪の汚染度だそうな(笑)。日本じゃまだ一般的なんだけどね。

またニュージーランドでパーティの時、食器を洗うのは男の仕事なんだけど、彼らは洗剤のついた泡だらけの食器をそのまま(すすぎをしないで)乾燥させるのには閉口した。その家だけの話かと思ったら、どの家庭も同じなんだよね。これって大丈夫なんだろうか(笑)。

病院では科学的根拠に基づいた清潔観念というのがあり、ユニヴァーサルなものではあるんだけど、国によってはかなり適当なところもあるらしい。手術器具を床に落としても「3秒以内だったらOK」(爆、プロレスかよっ!)なんて国もあるらしい。

東南アジアのリゾートに遊びに行った日本人観光客が、海から上がってきた捕れたてのぴちぴちした魚をお刺身にして食べる。新鮮だから大丈夫でしょって感覚。でも、下水道もない国の海は、病原菌がうじゃうじゃで汚染されているわけだ。きれいそうに見える海なんだけどね。

人間はそんなに弱いもんじゃないってことなのかもしれない。