May 15, 2008

恩寵と劫罰 

午前中は回診&産業医のレクチャー1時間&質疑応答。午後は研究日。昼休みに明大前のWiredにて週刊文春を斜め読み。連載中の小説の中で、作者の村上由佳が、人に文章を読んでもらう「プロの資質」について、主人公の脚本家にいわせている台詞が以下。

「大切なのは、ものごとの切りとり方、光のあて方なのだ。どんなに題材が豊富だって、その中から本当にいい素材を選べる目と、料理する腕がなかったら、出来上がった皿はみるも無惨になってしまう...書く事を仕事とすることは、恩寵よりも劫罰に近い事柄であり、、、書かずにはいられない呪いのようなものである (要約&省略箇所あり)」

うむ、その通りなんだろうなって思った。お金を払ってでも読みたくなる文書を書く(つまりプロってことだ)人の資質っていうのは、視野と視点とそれをどう捉えるかという展開力/構成力なんだということ。文章は巧いにこした事はないし、いわゆる語彙の豊富さと比喩の的確さは、努力とテクニックなんだろうけど。クールな編集者の視点がすべてではないとしても、ビジネスとしては売れなきゃ何の意味もないわけだから当たり前だよな。換言すれば、その資質を見極めるのがプロの編集者ってことなんだな。この作家(村上由佳)が、文壇(というのか、出版業界というのか)で、苦労して獲得した今の立場に至っての、本音なんだろうなって思った。素直でよろしい(笑)。

今の時代、PCのワープロとか携帯で文章を打って(書いてではない)薄っぺらな内容であってもそこそこのヴォリュームのものを創ってしてしまうと、それなりのものが出来上がってしまうからなんだけど、勘違いしてしまう奴がいるんだろうなって思った。作家にとっては昔のような「活字になった喜び」ってのはあんまりたいしたことなくなっちゃっただろうし。ま、それはそれで悲劇ではある。とまれ、情報量が爆発的に増大しつつける時代、コンテンツが圧倒的に不足してしまい、じっくり腰を据えて作り出すようなものっていうのは、どんどん端のほうへ追いやられてしまうことを危惧するわけだ、僕ら活字世代の読者としては。

それにしても、この作家の小説のエッチな描写は女性作家ならではの表現で、かなりえっちだわ(笑)。これも、素直でよろしい(爆)